伊坂幸太郎の小説も読んだことがない。
最近、原作となった映画がいろいろ出ているので、あらすじ知るなら小説読むより映像のほうが手っ取り早いだろう。
そう思って『重力ピエロ』を観た。2009年春公開の作品が、もうDVDになっている。ああ無常。
■ラノベかと思った。あるいは漫画みたい。人物設定とかエピソードとか、いちいち漫画っぽい。
■ある兄弟をめぐるお話。兄は泉水(いずみ)、弟は春(はる)。どっちも英語でspring。あっそう。
■弟は、母親が自宅で見知らぬ高校生にレイプされて妊娠し、生まれた子。犯人は30件にのぼる連続レイプ事件を起こしたが、懲役5年ほどで出所し、地元に戻って高校生売春などの違法風俗店を経営している。
■妻(兄弟から見た母)の妊娠がわかったとき、夫(兄弟から見た父)は天を仰いで神様に祈った。そのとき、「自分で考えろ」という声が聞こえたので、一生懸命自分で考えた結果、「産んで、育てよう」と妻に言った。あっそう。
■成人した弟・春は、建物の持ち主の依頼で、壁などに描かれたグラフィティ・アートを消す仕事をしている。近所で連続放火事件(ボヤ程度)が起こる。出火場所の近くにグラフィティ・アートが描かれているという共通点を発見し、兄と一緒に放火現場をおさえようとするが、結局、グラフィティ・アートを描いていたのも放火したのも弟だった。自作自演乙。
■弟が自作自演を行った場所は、24年前に連続レイプ事件が起こった現場だった。当時の新聞記事に掲載された、現場を示す地図に基づいて、忠実に後追いしていった。なんだか、中上健次
『十九歳の地図』
みたいだ。
■春が自作自演を重ねたのは、生物学上の父であるレイプ犯をおびきよせて成敗するのが目的だったが、「犯罪者の血を引く子もまた犯罪を犯す」という負の連鎖神話をベタに反復することになってしまった。
■大島弓子『桜時間』も似たような設定だった。3人のBFとほぼ同時並行的に付き合ってきたとり子さんは、妊娠したことをBFたちに伝えると、彼らはそろってトンズラした。子どもをおろす気になれないとり子さんの目の前に畑野作造があらわれて結婚したが、生まれた子ども・うさ吉の父親がだれかは一向にわからない。あるとき、テレビのニュースで、昔のBF(スゥイマーというあだ名)が連続殺人の果てに、警官の打ったピストルに当たって即死したことを知る。うさ吉はかなり腕白な子だが、あるとき腕白を通り越して、クラスメイトに怪我をさせてしまう。もしかして、うさ吉の父親はスウィマーなのではないか、と、とり子さんは思う。
■『桜時間』は、その後とても恐ろしいプロセスを経てハッピーエンドに至るのだが、漫画だからこそ作者の力技によって納得させられるわけで、これが実写化されたら、とても空々しくて観ていられないと思う。大島弓子原作の映画で成功した作品が一つもないのは、そういうことだ。
■『桜時間』は
『大島弓子選集10 ダリアの帯』
に収録されているが、同じ巻に収められている表題作『ダリアの帯』も、おっそろしいお話である。絵のタッチが甘々でボケボケしているからわかりにくいけれども。
■あれ? いつの間にか大島弓子の話になってしまった。でも、伊坂幸太郎はわたしにとってあんまり読む必要のない作家なんだろうなということは、なんとなくわかった。