左田野渉
『復刊ドットコム奮戦記-マニアの熱意がつくる新しいネットビジネス』
参考/引用文献一覧や参考図書の案内を見るのは、読書のひとつの楽しみだ。自分が信頼している著者がこれまでどんな本を読んで自己や自説を形成してきたのか、大いに興味がある。言い換えれば、コピー元を直接閲覧してみたい感じ?
一冊の本に引用されている文献に興味をもってひもとくと、その文献からさらに別の参考/引用文献にたどりつく。そうやって芋づる式に本から本へとたどっていくと、学問のプロでなくとも、ある分野についてのジャーゴンやアウトラインや争点がわかってくる。
そういう意味では、本書はまるごと一冊ブックガイドである。カテゴリは「絶版良書」といったところ。たぶん図書館で検索すれば閲覧できるんだろうけど、マニアなみなさんはぜひとも所有しておきたいんだろうな。わたしは近所の図書館を自分の書斎代わりにしているので、所有欲はさほどない。だから、復刊に対する熱意もあまりないのかな(でも、澁澤龍彦責任編集
『血と薔薇』
の全3号復原本は予約注文してまで購入しちゃったのよね〜。我ながらチョイスの基準があやふや)。
ぜひ読んでみたいなと思ったのは、アレクザンダー・ケイ
『残された人びと』
(『未来少年コナン』の原作本)、大海赫
『ビビを見た!』
、長谷川集平
『はせがわくんきらいや』
(どちらも「トラウマ系絵本」)、ノーマン・ヴィンセント・ピール
『積極的考え方の力―ポジティブ思考が人生を変える』
(自己啓発本の元祖)、
『KATAN DOLL RETROSPECTIVE―天野可淡作品集』
(人形写真集)あたり。
あとは出版業界の暗部というかしがらみ(再販制度や著作権問題)について、わかりやすくさらりと触れている(再販制度については佐野真一
『だれが「本」を殺すのか』
が詳しい)。復刊ドットコムの事業が苦戦を強いられる最大の要因でもあるから。本書で触れているとある書籍の復刊がほとんど不可能な事情をわたしはたまたま個人的に知っているのだが、それはやはり詳しくは書けないわな。プライバシーの侵害になるので。
絶版良書がようやく復刊にこぎつけるまでの経緯、あるいは復刊を断念せざるを得なかった経緯などが、臨場感たっぷりのドキュメンタリーとしても楽しめるし、ニッチな出版系ネットビジネスがコンスタントに利益を生む安定企業となっていくポイントがわかるので、ベンチャービジネスの成功事例としても読める。
紙媒体はネット媒体にどんどんお株を奪われつつあるけれども、「本」はけっしてなくならないだろう。モニターとしての紙の優秀さは液晶の比ではないし、携帯や閲覧の利便性、重みと手触りなどのアナログな質感も本ならではのもの。復刊ドットコム(およびブッキング)は、ネットビジネスでありながら紙媒体の復権、維持・保有を目的としている。媒体同士の食い合いではなく共存共栄をはかる、貴重なプロジェクトだ。
↓惜しむらくは、表紙がダサい……。

復刊ドットコム奮戦記-マニアの熱意がつくる新しいネットビジネス
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